何を聞かれても限られた言葉で答弁を繰り返す政治家、テンプレートに押し込むように同じような記事を並べる新聞など、今、日本社会では、これを言っておけば波風立たないだろうという紋切型の会話やテキストが、あちらこちらに溢れています。

メディアでは、ありきたりな感動話や共感しやすい話題ばかりが安っぽく消費され、議論すべき問題が放っておかれます。紋切型の表現や言葉が連呼されることで、個々人の考え方が尊重されなくなり、バリエーションに欠ける社会が生まれてしまうのです。

とりわけ2011年の福島原発事故以降、日本の言論空間では、表現の自由が揺さぶられる事態が頻発しています。それにもかかわらず、紋切型の言葉に頼り、自分たちの言葉で物申すことを諦めてしまった日本社会、そして言論空間の問題点を語ります。

【講演者】 武田 砂鉄(たけだ さてつ/Satetsu Takeda)
1982年生まれ。ライター。東京都出身。大学卒業後、出版社で主に時事問題・ノンフィクション本の編集に携わり、2014年秋よりフリーへ。「cakes」「CINRA.NET」「SPA!」「Yahoo!ニュース個人」「beatleg」等で連載を持ち、多くの雑誌、ウェブ媒体に寄稿。インタビュー・書籍構成も手掛ける。初の著作となる『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』で“第25回Bunkamuraドゥマゴ文学賞”を受賞〈選考委員:藤原新也〉。

~「Bunkamuraドゥマゴ文学賞」とは~
東京都渋谷区にある複合文化施設「Bunkamura」が主催する文学賞。フランス・パリで80年以上の歴史を誇る文学賞「ドゥマゴ賞」のユニークな精神を受け継ぎ1990年9月3日に創設。以来、20年余にわたり日仏文学交流に寄与してきた。海外の文学賞とゆかりをもつ賞は日本の中でも特異な存在。

近年の受賞作 :  
第25回 武田砂鉄『紋切型社会 言葉で固まる現代を解きほぐす』(選考委員:藤原新也)
第24回 山浦玄嗣『ナツェラットの男』(選考委員:伊藤比呂美)
第23回 恩田侑布子『余白の祭』(選考委員:松本健一)
第22回 金原ひとみ『マザーズ』(選考委員:髙樹のぶ子)