日本は――しばしばそう信じられているように――単一民族からなる社会ではありません。たとえば日本列島北部に位置する北海道では、もとは狩猟採集民族として知られるアイヌの人びとが和人による差別を受けながらも、独自の言語や風習文化を継承してきました。現在、アイヌの人口は数万人ともそれ以上ともされる一方、2019年にはじめて日本政府が法的に先住民として認めるなどアイヌ民族を取り巻く状況は変化しています。 

 本特集は、展覧会、講演会、映画上映、コンサート、ワークショップなどを通じ、さまざまな角度からアイヌ文化の実像に迫ります。



現代のアイヌの人びとや風景を記録したローレンヌ・チュルシによる写真展。アイヌ民族は、社会の変遷に伴ないさまざまな困難に不断に直面しながらも、独自の言語や風習をはじめ、アニミズムに根ざした精神性、口承による神話など、きわめてユニークな文化を伝承してきました。そうしたアイヌ民族の文化や遺産は、今日の日本の多文化的アイデンティにも欠かせない重要な要素と考えられています。本展は、今日、アイヌであることはどんな意味をもつのかという問いを携えて北海道にわたったフランス人写真家による貴重なドキュメントです。

6 月 11 日(水)にはアーティスト・トークも。