金沢市は、日本のほぼ中央に位置し、北西は日本海に面し、南西は山々に囲まれた、水が豊かで自然に恵まれた環境です。市街地は、3つの台地の間を犀川と浅野川という2本の河川が流れ、起伏に富んだ地形を持つ、緑豊かなまちです。

江戸時代に花開いた武家文化が、現在も市民生活に広く根付いており、能楽や茶道、華道などが盛んな一方、金沢21世紀美術館や金沢市民芸術村、金沢美術工芸大学などを拠点に新しい芸術・文化の創造にも熱心に取り組んでいます。金沢市とその周辺には、大学や専門学校が集積している「学術都市」でもあり ます。

数多くの伝統工芸も江戸時代から受け継がれており、多くの工芸作家や職人たちが今も活躍しています。特に、金箔の生産量は日本の99%を占めます。また、金沢には、独自の技術を有し、特定市場で高いシェアを有する個性的な企業が多いことも特徴です。

加賀藩主前田家とその家臣たち

16世紀後半、織田信長豊臣秀吉に仕えた前田利家は、北陸に領地を与えられて戦国大名となり、日本最大の藩・加賀藩の基盤を築いた。加賀藩では前田利家を初代とし、14人の藩主が継承しました。
金沢はこの加賀藩の首都にあたり、金沢城を中心に城下町が形成され、城の周辺を中心に家臣団が集住していました。18世紀初頭の人口は10万人を数え、江戸(東京)・大坂(大阪)・京(京都)に続く大都市として知られていました。
今回の展示は、藩主家と上級家臣家の資料を紹介しています 。

加賀文化の発展

►  茶道

日本の歴史上、茶道が盛んになったのは16世紀後期。長く続く戦乱の最中でした。武士たちは戦いに備え、主従の結束の場、心の安らぎの場として茶会 を開きました。加賀藩主前田家の初代利家は千利休に、3代利常、4代光高は当時の茶人として著名な小堀遠州に茶道を学びました。前田家、特に利常は茶道を 愛好し、名品の収集に力を注ぎました。 本展覧会の「名品展示」の部では江戸時代に藩主前田家、その重臣の家で収集された名品を展示してあります。「広間の茶会の道具」の部は重要な客を招いて開 く格式の高い道具を揃えてあります。「小間の茶会の道具」の部は茶室を再現したケースに10月に開く茶会の道具を揃えてあります。この時期の道具は他の季節と比べ「侘び」を重視します。

►  能の世界

14世紀末に生まれた能は将軍や上級武士の庇護の下で発展しました。前田利家は、時の権力者豊臣秀吉の影響で自らも能や狂言を演じています。加賀藩の歴代藩主は幼少期から能の稽古を始め、公式行事としての能楽には御手役者や町役者を出演させました。
能 は武家の式楽(公式の儀礼の場などで催される芸能)とされ、茶とともに武士たちの必須教養として重要な社交ツールとなりますとりわけ能を愛好した加賀藩前田家では、当時、1000点を越える膨大な数の能道具を所有しており、本展では、加賀藩前田家に伝来した能面をはじめ、前田家ゆかりの能道具を中心に、華麗なる能の世界をご紹介しています。

►  加賀の工芸

武具甲冑の製作には金工、漆、染織といった高度の工芸技術が必要とされ、そのために江戸、京都から第一級の技術者を招き、御細工所での製作と職人指 導に当たらせました。 京都から友禅染の技法が入ってくると、それに啓発されて加賀でも色絵の染物が始まり、やがて京都をしのぐ勢いで発展し、小袖や夜着、染幅の優品が作られます。同様に武器や武具に関する刀剣金工から始まり、御金工技術が確立、加賀独特の象嵌技術が完成しました。17世紀中頃、加賀藩から分離された大聖寺藩内九谷村において色絵焼き物の先進地であった有田から、窯業技術を導入して九谷焼を始める。いわゆる古九谷と称されている焼き物です。
加賀の工芸の伝統は、現在まで受け継がれ、金沢は日本でも数少ない美術工芸の盛んな土地柄となっています。

※2013年11月4日(月)に展示替えを行い、20点ほどの作品を交換する予定です。

【関連企画一部】

2013年10月2日(水)
「加賀百万石―金沢に花開いたもう一つの武家文化―」展 記念講演会
「加賀前田家18代当主が語る日本文化」
対談 : 前田利祐 氏(加賀藩前田家18代当主)
竹内佐和子 氏(パリ日本文化会館館長)

2013年10月2日(水)
「武家の茶道-遠州流茶道-」

2013年10月3日(木)
デモンストレーション・ワークショップ
「茶花-茶道の花生け-」
講師 : 松原宗江 氏  

2013年10月4日(金)、5日(土)
「能を学ぶ集中講座」
講師 : 河原清 氏(能楽師、幸流小鼓職分)

2013年11月5日(火)
講演「加賀文化 育まれた伝統の技とデザイン」
講師 : 末吉守人 氏(当展覧会コミッショナー)

2013年11月9日(土)
講演会「加賀百万石文化を受け継ぐ―商家と文化との関わり―」
講師 : 岡能久 氏(株式会社能作代表取締役社長)

2013年11月15日(金)
講演会「世界の象嵌と加賀象嵌」
講師 : 中川衛 氏(工芸家、重要無形文化財保持者)

2013年11月16日(土)
レクチャー&デモンストレーション
「加賀象嵌-江戸時代の美を受け継ぐ-」
講師 :中川衛 氏(工芸家、重要無形文化財保持者)