演目:「壇ノ浦」ほか

琵琶は他の弦楽器と同じく、古代ペルシャを祖とする楽器で、それがシルクロードを経て、日本へと広まった楽器である。琵琶にはいくつか種類があるが、近年広く普及したものに筑前琵琶および薩摩琵琶がある。筑前琵琶が小さく女性的な音がするのに対し、薩摩琵琶は大きく、男性的な音がする。これは薩摩琵琶が侍の教養として広まったという背景に由来する。

薩摩琵琶にも幾つかの流派があるが、そのうち鶴田流は、元々は錦心流の奏者であった鶴田錦史(つるたきんし)(1911〜95)によって始められた。鶴田は琵琶の伝統の上に、長年にわたって創意工夫を重ね、特に1960年代、作曲家、武満徹との一連の共同作業(『エクリプス』『ノヴェンバー・ステップス』など)は世界的な評価を受けた。これをきっかけに、鶴田の琵琶は従来の琵琶音楽の枠を抜け出し、全く新しい美学を持った琵琶として生まれ変わったのだ。西原鶴真は、鶴田師匠の最後の直弟子の一人である。