人気時代劇映画「旗本退屈男」(" Mikazuki, le samouraï gentilhomme”)シリーズで、俳優市川右太衛門(1907‐99)演じる主人公早乙女主水之介が身に付けた豪華着物114点が、京都・太秦の東映京都撮影所で発見されました。時代劇の衣装は仕立て直して別の作品に転用されることが多く、残されていることは稀で、まさに「幻の衣裳」と言えます。
本展示では、そのうち4点を選りすぐり、当時のポスターもあわせて紹介し、映画上映も行います。黄金期の時代劇映画が大衆向けの娯楽であると同時に、江戸時代の浮世絵と同じように、文化であり芸術でもあったことを、感じ取ることができるでしょう。

「旗本退屈男」と衣装
「旗本退屈男」(Mikazuki, le samouraï gentilhomme”)は、額に三日月の傷を持ち「退屈で仕方がない」を口癖とする江戸の旗本(samouraï gentilhomme)、早乙女主水之介の痛快な活躍を描いた時代劇映画です。1930年から63年まで約30作が作られ、「天下御免の向こう傷」などの決めぜりふで人気を集めました。上映する「旗本退屈男」(1958)は、シリーズの第23作で、右太衛門の映画出演300本記念映画として作成され、オールスターキャストで話題を呼びました。
衣裳の大半は、53年にベネチア国際映画祭で銀獅子賞を受賞した溝口健二監督の「雨月物語」で風俗考証を手掛けた日本画家、甲斐荘楠音(1894‐1978)がデザインしたもので、伝統的な華やかさの中にモダンな感覚を取り入れたものが多く、高度な職人技が用いられています。

関連行事
 映画上映プレゼンテーション
「『旗本退屈男』からみる日本映画史」
細川周平(国際日本文化研究センター教授)
-2019年10月24日 19時から
-小ホールにて
入場無料・要予約 (www.mcjp.fr)

 映画上映
「旗本退屈男」 松田定次監督 / 1958年製作 / 108分 / 日本
-2019年10月24日 19時30分から
入場無料・要予約 (www.mcjp.fr)