ポンシュウ(関敬六)と五島列島にやってきた寅さんは、クリスチャンのお婆ちゃん(初井言榮)と知り合うが、お婆ちゃんは急逝してしまう。その葬儀に参列した東京で働く孫娘・若菜(樋口可南子)から、寅さんに礼状が届く。若菜をたずねた寅さんは、写植オペレーターの技術を持つ彼女の再就職を、博にたのむ。若菜のアパートには、気の良い管理人のおばさん(杉山とく子)や、司法試験に挑戦している酒田民夫(平田満)が暮らしており、若菜に夢中な民夫は勉強も手につかない。そこで寅さんが恋の指南役を買って出るが…
風光明媚な長崎県五島列島。そこで、懐の寂しい寅さんとポンシュウに、一夜の宿を提供してくれた老婆の優しさと、彼女の死。人の出会いの美しさと、そこから始まる新しい運命。今回はこうした“人の縁”がおりなす、温かい物語が微苦笑のなかに展開される。樋口可南子と平田満。二人が演じる若いカップルを取り持つ、恋のベテラン・寅さん。都会で一人暮らしをする女性の孤独や、彼女をとりまく社会を、さりげなくリアルに描いている。後半、秋田県鹿角を舞台に繰り広げられる騒動まで、明るい笑いが、幸福な気分に誘ってくれる。
 

制作:1985年(松竹)| 108分 | 日本
監督:山田洋次
出演:渥美清 、倍賞千恵子、樋口可南子、平田満、初井言榮
ロケ地:秋田県 鹿角、長崎県 五島列島(福江島)