雅楽は明治以前には「実践音楽 musica practica」(ロラン・バルト)でありましたが、近代化とともにナショナル・アイデンティティの装置としての役割を担わされてしまいました。大阪大学音楽学准教授であり雅楽実践家でもある鈴木聖子が、雅楽を、東アジアの音の思想に見られる伝統的な聴覚文化――音の「無」と「空(くう)」を区別する心の形成、騒音や倍音を味わう身体の開発――から紐解きます。そして、日本の大学の授業で実践している 雅楽実習を紹介しながら、雅楽を心と身体で楽しむことができるよう促します。



講師:鈴木聖子



大阪大学大学院人文学研究科音楽学研究室・准教授。博士(文学/東京大学)。
伝統音楽の概念をナショナル・アイデンティティの装置であることから解放して楽しみ演奏することができるように再構築するため、近現代日本の伝統音楽・伝統芸能についての学知が形成されたプロセスを研究している。主要著作:『〈雅楽〉の誕生 田辺尚雄が見た大東亜の響き』(春秋社、2019年/サントリー学芸賞受賞)、『掬われる声、語られる芸――小沢昭一と『ドキュメント 日本の放浪芸』』(春秋社、2023年/令和5年度(第74回)芸術選奨文部科学大臣賞受賞)"