坂本龍一の注目によって知られることになった西原鶴真は、琵琶という日本の音楽伝統を象徴する楽器を、思いもよらない地平へと導いてくれる。彼女の強烈な存在感で、コンサートはまるでシャーマンの儀式に変容する。



西原鶴真は10代前半にパンク・ミュージックに深く影響を受けたが、彼女が琵琶を習おうと決めたのは、何よりもオリジナリティを求めたからだった。特に薩摩琵琶は、鹿児島地方でよく見られる4弦4フレットの楽器で、かつては叙事詩の朗誦に使われた。武士が武器として使ったとも言われるその広い三角形の撥は、パーカッシブで攻撃的な響きを生み出し、演奏者の静かな佇まいとは対照的に音楽を武術のように聴かせる。


鶴田錦史の薫陶を受け、坂本龍一らによってその存在を知られるようになった西原はビジュアルアーティストでもあり、Kintsugi(セルジュ・テソ=ゲイ、ギャスパー・クラウスとのトリオ)、舞踊や演劇の舞台にも参加してきた。実際、西原は今回のフェスティバル・ドートンヌで市原佐都子が演出する『弱法師』にも出演している。ピアス、タトゥーで、シャーマンのような強烈な存在感を放つ彼女は、このコンサートを通して伝統音楽からノイズそして歌唱まで、彼女のもっている楽器の広範な可能性を余すところなく披露することになるであろう。 


ダヴィッド・サンソン / フェスティバル・ドートンヌ2024







● 2024年11月12日(火)‐ 18時
● 2024年11月12日(火)‐ 20時