国際交流基金パリ日本文化会館は、サンテチエンヌ近代美術館(MAMC+)およびマルセイユ現代美術センター(FRAC SUD)と共催で、60年代からのモノ派、フルクサスの日本人作家と、それらの流れを汲む現代アートの作家を、「環境」をキーワードにさまざまな観点から呼応させる展示、「モノのエコロジー」展を開催します。


日本が戦後、急速な発展をとげ、社会が工業化していくなかで日本で生まれたいくつもの芸術運動は、今日の私たちの目から見ても驚くほど、私たちを取り巻く生活環境に深いまなざしを向けていました。そしてこの「環境へのまなざし」は、今日の作家の創作の中にも見出すことができます。

本展示はフランス側の3人のキュレーターが、モノと環境をテーマに、独自の感性と審美眼で作家・作品を選んだものです。フランスにおいても60年代の作家と現代の日本の作家を対比した展覧会はこれまであまり行われていません。その意味で、非常に野心的な企画であるとともに、展示ではモノ派やフルクサスなど戦後日本の主要な芸術の作家を紹介しつつ、現代の作家まで脈々と引き継がれているその影響、系譜を解き明かそうとする試みです。

 

■キュレーターステートメント

この春、パリ日本文化会館で開催される「モノのエコロジー」展では、復興と急速な社会の工業化を背景に、1960年代後半に日本で生まれた芸術運動と、今日の環境問題に関心を寄せる現代の作家の作品をつなぐ、その関係性を新たに読み解きます。これまで試みられることのなかったこのダイアログを通して、もの派やフルクサスなど、日本の主要な芸術運動の先駆的な作品が、当時すでに、私たちを取り巻く生活環境に対して、社会的、環境的、そして私的および集合的なレベルで、いかに深いまなざしを向けていたかを再評価していきます。

例えば、もの派の高山登や菅木志雄の作品は、天然か人工かを問わず(木や金属などの)生の素材をメディウムとし、それらを介在させ、また時には対峙させることで、環境に内在する歴史や記憶を浮き彫りにします。一方、梅沢英樹+佐藤浩一や吉村弘は、音というメディウムを使って、特定の建築に呼応する音楽的・視覚的な風景を創り出します。それは美術館、空港、住宅地といった思いがけない場所に、静けさの中の灯りのような空間を生み出します。これらの作家の表現手段は、今回展覧会で紹介するフルクサスのアーティストたち(オノ・ヨーコ、塩見 允枝子、斎藤 陽子)が好んで用いた手法や、彼女たちの言語表現とも呼応しています。

しかしこの展覧会が求めるものは、単純なアートの再解釈にとどまりません。作家が私たちの「生の営み」により注意深く目を向ける作品を創り、それを共有するため、作風やマテリエルを変えることも厭わず、いかにメディウムを探求したか、いかに感覚を研ぎ澄ましたか、その特徴を見せることにあります。言い換えれば、作家たちは社会の変革を前に、ある種の「事物に向けられた生態学」のようなものを実践していたといえるでしょう。

(エロディー・ロワイエ、ミュリエル・アンジェルラン、アレクサンドル・クワ)

 


■ 監修

成相肇(東京国立近代美術館主任研究員)

 

■ 出展作家

菅木志雄、高山登、野村仁、吉村弘、梅沢英樹+佐藤浩一、シンゴ・ヨシダ、斎藤陽子、オノ・ヨーコ、塩見允枝子、風間サチコ、盛圭太。



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■ 関連イベント

オープニング記念講演会
2025年4月29日(火)18時~
登壇者(予定):ミュリエル・アンジャルラン(マルセイユ現代美術センター館長)、アレクサンドル・クワ(サンテチエンヌ近代美術館主任学芸員)、エロディー・ロワイエ(カディスト財団顧問)、長門佐季(神奈川県立近代美術館長)、梅沢英樹、シンゴ・ヨシダ、盛圭太


■ 展覧会ガイドツアー

予約制・詳細は後日公開。

 





団体予約:

10名以上のグループでの訪問をご希望の場合、事前にstandard@mcjp.frまでご連絡ください(日本語可)。学校の団体予約は resagroupe@mcjp.frまでお願いします。

※学校団体予約を除き、20名以上の団体予約は受け付けておりません。

※お問い合わせの際、件名に【モノのエコロジー】と記載頂き、本文にご予約の希望日時、人数、代表者の氏名と連絡先をご連絡頂きますようお願いします。


お知らせとお願い:

当館には大型スーツケースを含む、大型の荷物の持ち込みは禁止されていますので、ご注意ください。

https://www.mcjp.fr/fr/informations-pratiques/mesures-vigipirate-a-la-mcjp

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