ながらく建築の現場は、あらゆるデザインの実験場だった東京が中心でしたが、今日では多様な自然や社会的変化のただ中にある日本各地の実例が面白い。「かたちが語るとき―ポストバブルの日本建築家たち(1995-2020)」展では、活動拠点や世代も異なる35組の建築家と、その独創的な形態を作りながら多様な周辺環境やコミュニティにも関与していく全64プロジェクトを紹介します。本展でとりあげる建築家は、バブル経済崩壊後の1990年代に活躍を始めた60年代生まれの世代から、気鋭の若手建築家までを対象としています。

かつて長谷川逸子や妹島和世は例外的な女性建築家でしたが、本展では13組に女性が含まれており、日本において女性建築家が増え活躍している状況も反映しています。本展の出展建築家はそれぞれ、模型や写真・動画などで建築的創造の過程を公開しながら、かたちへのステートメントを提示します。

バブル経済が崩壊、また1995年の阪神・淡路大震災を受けて、ポストモダンや脱構築主義は終焉しました。さらに、2011年の東日本大震災を契機に、派手なかたちよりもコミュニティの関係が重視されるようになりました。しかし、かたちと周辺との関係性は必ずしも対立する概念なのでしょうか?本展では、異なるプロジェクト間に見られる日本現代建築の新たな潮流を明らかにし、これからの建築を考えるための道筋を示すことを試みます。

いかに現代日本の建築家は、かたちを通じて環境やコミュニティを語るのでしょうか? 


キュレーター:五十嵐太郎(建築史家・東北大学教授)

出展建築家(アルファベット順に):アルファヴィル、蟻塚学、芦澤竜一、千葉学、シーラカンスK &H、遠藤克彦、遠藤秀平、畑友洋、平田晃久、ICADA、乾久美子、岩瀬諒子、光嶋裕介、久保都島建築設計事務所、前田圭介、前田茂樹、みかんぐみ、宮晶子、宮本佳明、百枝優、永山裕子、中村拓志、西沢立衛、大西麻貴+百田有希、ofa、齋藤隆太郎、島田陽、studio velocity、菅原大輔、田根剛、手塚建築研究所、宇野享/CAn、山下保博、米澤隆、吉村真基

展覧会カタログ