パリ日本文化会館と東京都江戸東京博物館は、パリ日本文化会館開館25 周年記念展「いきもの:江戸東京 動物たちとの暮らし」展を共同で開催いたします。

世界史上でも類を見ない、極めて長期にわたり平和が続いた日本の江戸時代(1603~1868)、現在の東京の旧称である江戸には幕府が置かれ、18 世紀初頭に人口100 万人という巨大都市へと発展しました。しかし、都市に暮らしていたのは人間だけではありません。さまざまな動物たちも一緒に生存していました。
人に飼育された動物もいれば、自然のなかに野生の動物もいて、江戸は実に生物多様性に富んだ都市でした。そして人々は、動物を自分たちの仲間かのように接していたと言われます。
1877 年(明治10)に来日した米国の動物学者、エドワード・S・モースは、日本人が動物を親切に扱うことに驚きました。町の人々が道に居座る犬や猫を邪魔しないように避けたり、またいだりして通行し、動物の名に「さん」付けして親しみを込めると記しています。また、1882 年から日本に17 年間滞在したフランスの画家ジョルジュ・ビゴーは、日本の世相を伝える多くの絵画を残しましたが、そのなかには動物と人とをユーモラスに描き出したものもあります。このように江戸から東京において、犬や猫、牛、馬、鳥などのいきものが、同じ都市に生きる共同体として、人々から愛情をもって接せられていたのです。

本展では、江戸・東京の人々といきものの暮らしの歴史と文化を、東京都江戸東京博物館の珠玉の所蔵コレクションから紹介します。動物との暮らしを楽しむ人々が描かれた浮世絵や、生活用品のデザインに取り入れられた動物たちの姿を通して、人といきものの共生の素晴らしさと、その前提となる豊かな自然環境の大切さをパリの皆さまにも感じていただければ幸いです。


【展示構成とみどころ】

プロローグ:外国人が見た日本人といきもの
フランス人画家ビゴーが描いた作品と、アメリカ人動物学者モースの言葉を紹介し、外国人が印象的に見た江戸・東京の人々と動物の関係性を紹介し、本展の導入とします。

第1章 江戸のいきもの~「江戸図屏風」の動物を探してみよう
1634 年頃に3 代将軍家光のために描かれたといわれる「江戸図屏風」には、動物の姿も描かれています。江戸での人々と動物の関わりを探っていきます。

第2章 飼育されるいきもの
本章では、江戸・東京人々の暮らしで密接な存在であった、馬や牛などのはたらくいきものと愛玩用に飼われるようになった小動物を紹介します。

第3 章 野生のいきもの
江戸時代以降、江戸は巨大都市として開発が進んでいましたが、近郊には野生のいきものが現代よりも生きていました。四季折々の鳥や虫を見るのも、庶民の楽しみの一つでした。

第4章 見られるいきもの~見世物から動物園へ
舶来のゾウやラクダなどの動物は見世物で大人気となり、珍しい鳥や鹿を見る花鳥茶屋なども盛り場に開設されました。明治時代以降には、東京にも動物園や水族館が開設されました。

第5章 デザインのなかのいきもの
人々の暮らしのなかの衣装や道具には、様々な動物が吉祥のデザインとして使われています。また子どものおもちゃには、今も昔も動物のモティーフがとり入れられています。