瀬戸内海の小島で、墓参をしている美しい浜田ふみ(松坂慶子)と知り合った寅さん。それからしばらくして、大阪で芸者をしているふみは、石切神社で寅さんと偶然再会する。二人は生駒山の宝山寺でデートを楽しむが、ふみには幼くして別れた弟がおり、寅さんのすすめで一緒に逢いに行くが、弟は病死していた。失意のふみに優しくする寅さんだったが、彼女の想いを受け止めることができずに、柴又へ帰る…
東京生まれの寅さんにとって、大阪は肌が合わない場所のはずだったが、居心地が良い場所となったのは、松坂慶子演じる美人芸者・ふみがいればこそ。幼くして肉親と離ればなれになり、芸者をしているふみにとって、寅さんの純粋さと心意気は、自分自身をみつめるきっかけにもなる。粋にチップを差し出す寅さんに「友達のつもりよ」と突き返す彼女の心意気。これぞ大阪!というキャスティングの妙。通天閣の安ホテルの主人に、芦屋雁之助。先輩芸者にかしまし娘の正司照枝・花江。そして、ホテルで飲んだくれているおっちゃんに笑福亭松鶴。華やかさとはかなさ、男と女の機微、細やかな演出が堪能できる一本。本作より満男役が吉岡秀隆にバトンタッチ。

制作:1981年(松竹)| 104分 | 日本
監督:山田洋次
出演:渥美清 、倍賞千恵子、松坂慶子、芦屋雁之助

ロケ地:大阪府 大阪、長崎県 対馬