川端康成(1968年、ノーベル文学賞受賞)は敗戦後に、「日本古来の悲しみの中に帰ってゆくばかりである」という決意のもとに作家活動を続け、日本人の心性であった「もののあはれ」の世界が、歴史の必然によって近代的世界にとって代わるのならば、自身もその滅びてゆく世界に殉じるしかないと考えていた。その川端が小説に描く女性像を中心に展開する劇作品。

第一話 - 千羽鶴 :匂うような官能の幻想
亡き不倫相手の成長した息子と会い、愛した人の面影を宿すその青年に惹かれた太田夫人の愛と死を軸に、美しく妖艶な夫人を志野茶碗の精のように回想する菊治が、夫人の娘とも契る物語。

第二話 - 浅草紅団 :美と醜が混在する風俗 
姉を捨てた男への復讐のために、浅草の街をさまよう不良少年少女パッフォーマンス集団「浅草紅団」首領の中性的美少女、弓子と浅草の裏社会に生きる人々の有様を綴る物語。 

第三話 - 雪国 :定めない命の純粋
雪国を訪れた男が、温泉町でひたむきに生きる女たちの諸相、ゆらめき定めない命の各瞬間の純粋を見つめる物語。