パリ日本文化会館は、開館20年を記念し、江戸時代後期から1867年のパリ万博までの日仏交流に焦点を当てた「ジャポニスムの夜明けー19世紀に於けるフランスと日本の初期交流」展を開催いたします。
フランスに渡来した日本の漆・螺鈿工芸品、陶磁器をはじめ、浮世絵アルバム、日本家屋の模型など111点の展示を通して、当時のフランス人が日本美術に向けた視線を辿ります。また、第二帝政下のフランスを訪れた日本の遣欧使節団員の肖像写真も合わせて紹介します。 新しい表現を求めるフランスの芸術家たちが、日本の玉虫色に光る着物、1840~1865年の浮世絵の鮮やかな色彩、北斎や同時代の絵師によって描かれた自然主義的な浮世絵を発見した時代でもありました。
鎖国体制下にあった江戸時代、 対外貿易は、長崎の商館でオランダと中国を介してのみ行われていました。オランダの商館員たちが、欧州に帰国の際、日本での収集品を持ち帰ったのに対し、フランス人は派遣渡航先の中国に於いて、輸入された日本の美術品を入手することができました。鎖国時代の日本は、想像に反して、それほど世界から隔絶されていたのではなく、フランスについてもすでに様々な知識を有し、とりわけフランス革命とナポレオン帝国については承知していました。
1858年、日本とフランスとの間に修好通商条約が締結されると、通商関係は強化され、徳川幕府は1862年と1864年に使節団をフランス・欧州に派遣します。また、1867年の第二回パリ万国博覧会への初参加に際し、幕府は、将軍の名代として徳川慶喜の弟、徳川昭武(当時14歳)をフランスに送りますが、それは、徳川幕府の廃止、そしてその後の日本を大きく変えた明治維新の直前のことでした。
『ジャポニスムの夜明け』展では、初公開となる複数の作品を含む、フランスの国立・公立美術館・図書館の収蔵品111点を展示します。日本から渡来したオブジェの中には、鎖国時代にオランダ人が日本に伝えた版画をもとに製作された黒と金の漆によるフランスの人物肖像メダルや、長崎出島のオランダ商館長の子息がフランス国立図書館に寄贈した北斎の肉筆画もあり、北斎が西洋の遠近法に精通していたことが見てとれます。
1840年代初めから、日本の漆工芸品、陶器、日本家屋の模型などはパリで売られており、1844年の中国との通商条約締結に赴いたフランスの使節団が中国から持ち帰った日本の品々もあり、その中には、出島の眺めを漆と螺鈿で鮮やかに仕上げた板絵の逸品も含まれています。
1858年、日仏修好条約締結のため日本に赴いた、フランス使節団の一人であったシャシロン男爵の収集品、パリで撮影された1862年と1864年の日本の遣欧使節団員の肖像写真、1867年のパリ万博で紹介された日本の陶磁器、浮世絵アルバム、絵本等は、どのようにして 「ジャポニスム」と称される、日本美術への正真正銘の熱狂が、時を待たずして起こったかを示すことでしょう。
監修 ジュヌヴィエーヴ・ラカンブル (文化遺産名誉学芸員)