日常のふとした疑問をユーモアを交えて舞台上に取り上げる松根充和氏。個々の人生をマクロな歴史的事象に照らして作品に発展させてきました。ウィーン在住の松根氏はドキュメンタリーとコンセプチュアルの手法を融合した独自のパフォーマンスの領域を開拓し、現在アヴィニョン演劇祭から新作の依頼があるほどのアーティストとなっています。今回は、ゲラン社の香水「Mitsouko」がなぜそのような名前になったかという問いから、20世紀の欧州に移り住んだ日本人の生涯、ジャポニスムや黄禍論、欧州統合への動きといった複数のレイヤーを重ね、「祖国を離れて生きる人々と国境」という繊細なテーマを扱う舞台作品にしました。30年前に渡欧した松根氏が複数言語で語る本作。日本とフランスの架け橋として存在するパリ日本文化会館の主催で、欧州随一のフェスティバル・ドートンヌとのタイアップを得て公演します。


対話するような語り口で始まるこのパフォーマンスは、通常の演劇とは異なる展開をしていきます。1919年にフランスで生まれた香水につけられた日本人女性の名前を起点に、日本や欧州が近代化していく歴史的うねりと、その中で翻弄される過去と現在の個々の人生を、是非体感してください。