日本伝統の芸術には、道という言葉がよくついています。この道には、二つの意味があります。ひとつは、その時代の社会の倫理道徳を高める道で、心の学問の道、心学の道とも言われます。もうひとつは、時代に関わらず、人間の個人の命の力を高めさらに、あらゆる技術の力を極限まで高める道です。心の法則の道、心法の道とも言います。この2つの道は、縄のようにからみあって一つの道のように、感じられることもあります。また、ほとんどの日本人は、道とは、心学の道と思っている人が多いです。今回は、伝えられている心法の道と現代生活に生きる合気道についてお話しします。

講演者経歴:
多田宏
1929 年 12 月 14 日東京に生まれる。早稲田大学法学部卒。1950年より 合気道開祖植芝盛平直門。同年、 心身統一法創始者中村天風直門。山岡鉄舟の教えを継ぐ 禅と禊の修行団体一九会道場入門。大学卒業後、日本武道の歴史と合気道の研究を専門に行い、各大 学に合気道会を設立する。1964年ローマにイタリア合気会を創設。同会は1978年、日 本伝統文化の会=イタリア合気会として、イタリア大統領令 526号によりイタリア政 府公認の Ente Morale(財団法人)となる。2015年より、45年ぶりにパリでの研修会を再開。現在、イタリア合気会の主任教授、および、公益財団法人合気会、本部師範、合気道九段 。