ある場の中で踊るのではなく、その場を踊る。

Locus Focusは田中泯が2004年に始めたパフォーマンスのシリーズである。日本や海外、我々の日常に存在する場。身をおく場所に特別の意味を見出すものだ。その場所の力を借りて生まれる即興は、毎回違ったものとなる。

今回のLocus Focusは、パリ日本文化会館の現代的な空間cours anglaise(中庭)をはじめてみなさまに公開して、踊っていただく。土方巽の影響を大きくを受けた、この類稀なるダンサーを見ることができる貴重な機会となる。

何事にも始まりがある。舞踏が土方巽によって始まった時代を思い返してみることが在るだろうか。私たち個人が生まれてきた時代を思うことが在るだろうか。今在る物事の全てに始まりが在る。「私」の始まりがあるように「生命」の始まりもある。ダンスは「生命」の始まりと深く関わってきた。ダンスは常にその時々の社会から生まれてきた。今、舞踏は生まれているのだろうか?ステージやスタジオからの踊りが生まれる時代はもう去った。いや終わらせねばならない。私たちの時代はそういう時代なのだ。私にはもはや舞踏は必要ない。いや終わったと公言します。私にとって舞踏は土方巽の存在そのものです。私達には、まだも、例のない、名前のない見ぬダンスを求めて生きる楽しみが残されているはずです。 田中 泯


【関連企画】
6月29日(水)21時より、旧フランス銀行庭園(Pantin)での場踊りも予定されています。ご予約は国立ダンスセンターまでcnd.fr 01 41 83 98 98