我々は食べ物を発酵、熟成させる微生物のように生きることができるだろうか。「思考や創作活動を発酵させる」とはどういうことだろうか。情報処理・科学研究者である早稲田大学文学学術院ドミニク・チェン教授は、日本の伝統的な発酵食品であるぬか床のサイボーグ化研究開発をはじめ、東アジアの発酵文化を調査する過程で「発酵の哲学」を追求してきた。本講演会では、発酵とは?日本の認識論に基づく人間のウェル・ビーイングに関する建設的な概念との関係性は?などの最新論考を発表する。また対談相手には、ガストロノミーをテーマとしたフランス語著書を数多く執筆している関口涼子氏を迎える。関口氏の著書のタイトルでもある「名残り」。その考え方、過ぎゆく季節への郷愁、試食試飲という行為のなかにも見える人間がウェル・ビーイングを突き詰めたときに至る発想など、食(文化)を介したアプローチとかけあわせチェン氏との議論を展開する。



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