呼吸生理学者であり、「呼吸と能」、「呼吸と心」の関係をコンセプトに長年研究を続けている本間生夫がプロデュースした、ふたつの“オンディーヌ”、映画「オンディーヌの呪い」と能「オンディーヌ」の公演。
泉の精と人間のこころを古典と現代の異なる手法で表現する舞台。睡眠時無呼吸症候群の別名でもある「オンディーヌの呪い」をテーマにした短篇スリラー。二つのオンディーヌが融合され、生命の根本である呼吸によるこころの表象を試みる企画。

映画「オンディーヌの呪い」
主演 長塚京三、遠山景織子、梅若猶彦 他
監督 甲斐さやか
音楽監督YAS-KAZ
製作・企画:本間生夫
総合プロデューサー 本間生夫(Ikuo HOMMA)

 シテ方 梅若猶彦

●映画 「オンディーヌの呪い」

「眠ったら呪われる?」能で眠った瞬間はじまった、もう一つの日常。

概要:
医師・清三と年下の美しい妻・麗子。一見、立派で仲睦ましい夫婦だが、清三は麗子に若い愛人がいるのではないかと疑っている。
ある日夫妻は医師学会が主宰している新作能「オンディーヌの呪い」を観に行く。
会場でも麗子は男の目を引き、受付の若い男からも熱い視線を送られている。
「能はつまらない」という麗子に対し、関係者ばかりの場なのだから「眠らないように」と清三は注意する。
しかし、能が始まり、麗子が清三を見やると、当の本人・清三が眠っていた。
ここから物語は、能の死の世界と、二人が存在する生の世界が平行して行く。
まるで二人が能を演じているかの様に、現実と非現実が交差し、日常生活に潜んでいた秘密が滲み出して来る。

上映分数:31分 / 製作年:2014年
山形国際ムービーフェスティバル「準グランプリ」

甲斐さやか :
女子美術大学卒業。在学中に映像ユニットbug’s film makersを小林和史と結成し「BORDER LINE」(東京ビデオフェスティバル・ゴールド賞受賞作品)、 「pellet」(Santafeショートフィルムフェスティバル「審査員奨励賞」受賞、ぴあフィルムフェスティバル準グランプリ&技術賞他、海外の映画祭に多数ノミネート)の2作を共同監督する。

その後の主な監督作品は
■Yuming Films「バイバイ、ベアー〜青いエアメイル」(主題歌・松任谷由実、主演・多部未華子) ■BeeTVドラマ「伝染るんです。」 (原作 吉田戦車) 
■「Inherited Things」Changwon Asia art festival(韓国)招待上映 ■「SIOSAI」札幌国際短編映画祭ノミネート(出演 甲田益也子) ■ワーナーミュージックジャパン・馬場俊英ショートフィルム「僕がいた 君がいた」(主演 小日向しえ)
その他
「MORI ART MUSEUM(六本木ヒルズ)」などのデジタルサイネージや多くのMVを監督。

能「オンディーヌ」

あらすじ:
能の物語ではハンスはすでに亡くなっているところから始まる。
人の世におりたオンディーヌは老女となり、ひとり苫屋に住み、ハンスを想いつづけている。それを見た水界の王はオンディーヌを不憫と思い、ハンスをこの世に呼び戻す。
王は、もしハンスが再びオンディーヌを裏切るならばハンスは呼吸が止まるだけでなく、オンディーヌからハンスの記憶がすべて消え去る、という妖術をかけた。
ハンスは裏切りのこころを持ってしまい、呼吸が止まる。
それとともにオンディーヌからハンスのすべての記憶が失われる。

本間 生夫 :
呼吸生理学者。有明医療大学副学長、昭和大学医学部名誉教授。
情 動と呼吸に関する研究から、心と呼吸の密接な関係を示している。息苦しさを鎮める「呼吸筋ストレッチ体操」など呼吸リハビリテーションの研究も進めてい る。能との出会いは著書「息のしかた」(朝日新聞社)から。‘Breathing Mind in Noh’ (Springer Verlag 2006) でシテ方の脳活動と呼吸の関連を示した。

シテ方:梅若猶彦  楽師観世流シテ方。
上智大学外国語学科卒。ロンドン大学ph.D取得。2008年文化交流使(文化庁)、ロンドン大学ロイヤルウェイ客員教授を経て、現在静岡文化芸術大学教 授。多くの能楽で自ら演じる傍ら、創作能や現代舞踊とのコラボレーションなどにも積極的に取り組む。さらに能の本質とは何かについて思索を深めている。能 を通じての国際交流も活発に行う。祖父は12世名人梅若万三郎、父は梅若猶義。主な著書:能楽への招待