前半は人気舞踊「お祭り」で幕をあけての、坂東彌十郎によるレクチャー。後半は坂東彌十郎・坂東新悟による歌舞伎舞踊の大作『積恋雪関扉』。華やかな曲に乗せて演じられる古風な様式美の世界を存分にお楽しみいただきたい。

「積恋雪関扉」通称『関の扉』は1784年11月に江戸で初演された「重重人重小町桜」という芝居の中の舞踊劇の部分である。今回は、上下二部構成になっているこの舞踊劇の、下の場面を上演する。

場面は雪の積もった逢阪山にある関所、傍には樹齢三百年にも余る桜の木。この桜をこよなく愛した天皇が崩御し、それを悲しんでか花の色が白くなり、薄墨桜と呼ばれている。雪の積もる冬に、満開の薄墨桜。まるでおとぎ話のような、歌舞伎らしい場面だ。

ここで登場する酒に酔った関守関兵衛、実は天皇を滅して天下を狙う大伴黒主である。手に持つ盃も銚子も(後に使う鉞も)大きめであり、黒主の力強さが表現されている。さて酒を飲もうと盃を覗くとそこに映る星影。占うと、丁度今夜樹齢三百年を超える桜を切って祈祷に使えば願いが叶うと出た。関兵衛は傍の鉞で桜を切ろうとするが、不思議にも気を失ってしまう。 

そしてそこに桜の精が遊女墨染の姿となって現れ、怪しむ関兵衛に廓遊びの様子を語ってきかせる。墨染は、関兵衛がふと落とした片袖を見て涙する。この片袖こそ黒主に殺された桜の精の恋人安貞のものだったのだ。

そこから二人は本性を明かし合い、激しく戦う。

坂東彌十郎 プロフィール
1956年5月10日生まれ。初代坂東好太郎の三男。
1973年5月歌舞伎座にて初舞台。
1983年から15年間、三代目市川猿之助の門下に入り、数々の舞台に参加。
猿之助一門の若手で構成する21世紀歌舞伎組のメンバーとして活躍。
パリでのオペラ「コックドール」等で演出助手を務め、坂東玉三郎の「夕鶴」では演出もした。
近年では十八代目中村勘三郎との共演も多く、平成中村座の海外公演にも参加。

坂東新悟 プロフィール
坂東彌十郎の長男。1990年12月5日生まれ。
1995年7月歌舞伎座にて初舞台。
女方として古典作品から新作歌舞伎まで幅広く演じる他、立役にも積極的に取り組み、
多様な役を確実にものにしている